結論ブルーマウンテンは、ジャマイカの法令で決めた「ブルーマウンテン地区」で育ったコーヒーです(ジャマイカの規則・全日本コーヒー公正取引協議会)。日本の袋で「ブルーマウンテン・ブレンド」と書けるのは、ブルーマウンテンを 30% 以上使った物です。割合の数字は書かなくてよい決まりなので、ブルーマウンテンだけの豆を探すなら「ブルーマウンテン」「ブルーマウンテン 100%」と書いた袋を選び、原材料の欄も確かめます。
この記事は、「ブルマン」の名前を見て、どこの豆なのか、なぜ特別に扱われるのかを知りたい人に向けて書きました。書き手は、この記事のためにブルーマウンテンを飲んでいません。産地と表示の話は、ジャマイカの法令と規制機関、ジャマイカ政府、輸出業者の団体と、日本の業界の規約・統計から引いています。味の説明は、ジャマイカ側の団体の言葉だけを紹介します。
ほかの産地との味の比べ方は「コーヒー豆の産地と味の違い」に、ブレンドそのものの意味は「ブレンドとストレートの違い」にあります。
ジャマイカの法令が地名で線を引く
ブルーマウンテンの決め方
ジャマイカでは、コーヒーの取引を「ジャマイカ農産物規制機関(JACRA)」が取り締まっています。2018 年 1 月 1 日に、それまでの「ジャマイカ・コーヒー産業委員会」の仕事を引き継ぎました(JACRA)。
JACRA の規則(2018 年。ジャマイカの官報に載った物)は、ブルーマウンテンを次のように決めています。
“Jamaica Blue Mountain Coffee” means coffee that is grown in the Blue Mountain area of Jamaica;
「ジャマイカ・ブルーマウンテン・コーヒー」は、ジャマイカのブルーマウンテン地区で育ったコーヒー、という意味です。その地区は、規則の別表で、地名を順につないだ線で囲んでいます。スキボ(Skibo)から東南東へスウィフト川、チェルシー……と進み、ジョン・クロウ山の西の斜面を通って、またスキボに戻る線です。
JACRA の説明では、ブルーマウンテン地区は、セント・トーマス、セント・アンドリュー、ポートランドの 3 つの教区(ジャマイカの行政の区分)にあります。
標高の数字は、規則には書いていない
ブルーマウンテンの話では「標高○○m 以上」という数字をよく見かけます。ただ、JACRA の規則の区域は地名でつないだ線で、標高の数字は書いていません(規則の本文を編集部が確かめた範囲)。
ジャマイカコーヒー輸出業者協会は、標高 2,000 フィート(約 610 m)より高い所で、いちばん質の良い豆が採れる、と書いています。これは産地の条件ではなく、輸出業者の団体の説明です。
地区の外の豆は「ハイマウンテン」
JACRA の規則は、ブルーマウンテン地区の外で育ったジャマイカの豆のうち、上の等級の物を「ジャマイカ・ハイマウンテン・スプリーム」と呼んでいます。同じジャマイカの豆でも、地区の外ならブルーマウンテンとは呼べません。
| 名前 | ジャマイカの規則での意味 | 出典 |
|---|---|---|
| ブルーマウンテン | ブルーマウンテン地区で育ったコーヒー | JACRA 規則 |
| ブルーマウンテン・ブレンド | ブルーマウンテンが重さで 30% 以上 | JACRA 規則 |
| ハイマウンテン・スプリーム | 地区の外で育った、上の等級の豆 | JACRA 規則 |
名前を使うには、JACRA の許可が要る
名前の使い方は管理されている
JACRA の規則は、許可なしに「Blue Mountain」「High Mountain」の言葉を使って、コーヒーを売ったり輸出したりすることを禁じています。破った人には罰金の定めがあります(規則第 21 条)。
名前の使い方は、次のように管理されています。
- 「Jamaica Blue Mountain」は登録された商標。持ち主は、JACRA が全部を持つ子会社「コーヒー・マークス社」で、ブランドの管理と使用の許可を受け持つ(JACRA)
- 生豆や焙煎した豆を扱う業者は JACRA の免許が要り、自分のラベルで売るには商標の使用の許可も要る(JACRA)
- 輸出を認められた生豆は、JACRA が預かり、業者に代わって輸出する(規則第 22 条)
- JACRA は、品質の基準を決め、品質の確認と認証をする(JACRA)
量が少ない、と資料が書く理由
資料が書く「量が限られる」理由
ブルーマウンテンの値段は、この記事では扱いません。ここでは、資料が書いている「量が限られる」話だけを紹介します。
ジャマイカコーヒー輸出業者協会によると、ジャマイカでコーヒーを育てている土地は 3 万エーカーを超えます。そのうちブルーマウンテン地区の中にあるのは、約 9,000 エーカー(約 3,600 ha。編集部の換算)です。同じ協会は、生産の 85% を小さな農家が担い、豆は手で摘むので手間がかかる、と書いています。
JACRA は、ジャマイカで主に育てている品種を「ティピカ(アラビカ種の 1 つ)」とし、カップの質は良いが、ほかの品種ほど多くは採れない、と説明しています。アラビカ種については「アラビカ種とロブスタ種の違い」にあります。
日本は、ジャマイカのコーヒーの大きな買い手
ジャマイカ政府(産業・商業・農業・水産省)は 2019 年 1 月の発表で、日本を「ジャマイカのブルーマウンテン・コーヒーのいちばん大きな輸入国」と書いています。ジャマイカコーヒー輸出業者協会は、2017/18 年の輸出の 70% が日本向けで、日本への最初の直接の出荷は 1953 年だった、としています。
一方で、日本が輸入するコーヒーの中では、ジャマイカの豆はわずかです。全日本コーヒー協会の統計(財務省の貿易統計から作成)では、2025 年に日本が輸入した生豆は約 35 万 9,382 トンで、そのうちジャマイカからは約 288 トンでした。全体の 0.1% に届きません(編集部の計算)。この数字はジャマイカから来た豆全体で、ブルーマウンテン以外も含みます。
味は、ジャマイカ側の団体の説明だけ
ジャマイカコーヒー輸出業者協会は、ブルーマウンテンの味を「豊かで、やさしい(RICH, yet GENTLE)」「なめらかに飲める(goes down so SMOOTHLY)」と書いています。JACRA は、ティピカのカップの質を「fine cup quality」としています。どちらもジャマイカ側の説明で、書き手が飲んで確かめた感想ではありません。
日本の袋は「ブレンド」なら 30% 以上
日本の袋の決まり
日本で売られる袋入りのコーヒー豆と粉には、業界の規約(全日本コーヒー公正取引協議会の公正競争規約)があります。規約の別表は、ブルーマウンテンを「ジャマイカ・ブルーマウンテン地区にて生産されたアラビカコーヒー豆」としています。
ブルーマウンテンに関わる決まりは 2 つです。
- 「○○ブレンド」と書けるのは、その豆を 30% 以上使った物だけ
- 特定の産地の豆だけを使ったと書くなら、ほかの豆は使えない
つまり「ブルーマウンテン・ブレンド」は、ブルーマウンテンが 30% 以上という意味です。規約は割合の数字を書くことまでは求めていないので、数字がない袋では、30% 以上ということしか分かりません(規約からの編集部の読み)。ジャマイカの規則も、ブルーマウンテン・ブレンドを 30% 以上としていて、数字は日本の規約と同じです。
規約は、「ハイマウンテン」と「ジャマイカ」も分けています。
| 袋の言葉 | 日本の規約での意味 |
|---|---|
| 「ブルーマウンテン」 | ジャマイカ・ブルーマウンテン地区のアラビカ種。ほかの豆は使えない |
| 「ブルーマウンテン・ブレンド」 | ブルーマウンテンが 30% 以上。残りは別の豆 |
| 「ハイマウンテン」 | ジャマイカ・ハイマウンテン地区のアラビカ種 |
| 「ジャマイカ」 | ジャマイカのアラビカ種のうち、上の 2 つ以外 |
袋の裏の一括表示には、原材料名の欄に「生豆生産国名」が書いてあります。ここは国の名前を書く欄なので、ブルーマウンテンでもハイマウンテンでも「ジャマイカ」です。原材料の欄だけでは、ブルーマウンテンかどうかは分かりません(規約からの編集部の読み)。ブレンドで 3 か国以上を使った袋では、重さの多い 2 か国以上を書き、残りは「その他」でよい決まりです。一括表示の見方は「コーヒー豆の買い方」にあります。
缶やペットボトルのコーヒー飲料は、別の規約の対象です。この記事の決まりは、袋入りの豆と粉、インスタントコーヒーの話です。
袋を確かめる順番
袋を確かめる順番
- 表の名前を見る。「ブルーマウンテン」「ブルーマウンテン 100%」ならブルーマウンテンだけ。「ブルーマウンテン・ブレンド」なら一部
- ブレンドなら、割合の数字を探す。書いていなければ 30% 以上ということだけが分かる
- 裏の原材料の欄で、ジャマイカ以外の国の名前が並んでいないかを見る
- 「ハイマウンテン」「ジャマイカ」は、ブルーマウンテン地区の外の豆。名前が似ていても別の物
- それでも分からないときは、売っている店や作った会社に聞く(編集部の提案)
まとめ
ブルーマウンテンだけの豆を飲みたいなら「ブルーマウンテン」「ブルーマウンテン 100%」と書いた袋を、ブレンドなら割合の数字がある袋を選ぶと、中身が分かります。
次にやること
次にやること
ブルーマウンテンの名前が付いた袋を手に取ったら、表の名前が「ブレンド」かどうかと、割合の数字が書いてあるかを確かめてください。
次に読む
- ブレンドの表示をもっと知りたい →「ブレンドとストレートの違い」
- 同じく表示の決まりがある豆 →「コナコーヒーとは」
出典・確認した資料
- ジャマイカ官報 2018-03-02「The Jamaica Agricultural Commodities Regulatory Authority Regulations, 2018」(第 2 条の定義:ブルーマウンテン・ブルーマウンテン・ブレンド 30%・ハイマウンテン・スプリーム、第 21 条・第 22 条、別表 1 の区域)https://jamaicacoffee.org/html/wp-content/uploads/2019/05/JACRA-Act-Regulations.pdf (2026-11-04 確認。ジャマイカコーヒー輸出業者協会のサイトに置かれた官報の写し)
- 同じ規則(国連食糧農業機関 FAOLEX の写し)https://faolex.fao.org/docs/pdf/jam221800.pdf (2026-11-04 確認)
- JACRA「Coffee: About Coffee」(ブルーマウンテン地区の 3 教区・ハイマウンテン・ティピカ)https://jacra.org/divisions/coffee/about-coffee/ (2026-11-04 確認)
- JACRA「Coffee: Background」(コーヒー産業委員会の設立と、2018-01-01 の引き継ぎ)https://jacra.org/divisions/coffee/background/ (2026-11-04 確認)
- JACRA「Coffee: Introduction」(商標の持ち主・品質の確認と認証)https://jacra.org/divisions/coffee/introduction (2026-11-04 確認)
- JACRA「Coffee: Licensing & Permits」(業者の免許・商標の使用の許可)https://jacra.org/divisions/coffee/licensing-permits/ (2026-11-04 確認)
- ジャマイカ 産業・商業・農業・水産省「Newly appointed JACRA Board to lead development of coffee industry」(日本はいちばん大きな輸入国。2019 年 1 月)https://www.miic.gov.jm/newly-appointed-jacra-board-lead-development-coffee-industry (2026-11-04 確認)
- ジャマイカコーヒー輸出業者協会「What We Do」(栽培面積・小さな農家・手摘み・標高・日本向け 70%・1953 年・味の説明)https://jamaicacoffee.org/?p=17 (2026-11-04 確認)
- 全日本コーヒー協会「コーヒー生豆輸入量 上位24ヶ国」(2025 年のジャマイカ 288,279 kg・総合計 359,381,973 kg。資料:財務省「貿易統計」)https://coffee.ajca.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2026/03/data-24-2025-2.pdf (2026-11-04 確認)
- 全日本コーヒー公正取引協議会「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約・施行規則」(「○○○ブレンド」は 30% 以上・特定の産地のみの表示・生豆生産国名・別表 2 のブルーマウンテン/ハイマウンテン/ジャマイカ。令和 6 年 10 月 1 日施行の版)https://www.jfftc.org/DATA/Kiyaku_pdf/b05_H_coffee.pdf (2026-11-04 確認)
