結論モカは、アラビア半島のイエメンにあった港「モカ」から積み出されたことから付いた名前で、エチオピアとイエメンで育ったコーヒーを指します(UCC)。日本の業界の規約は「モカ」だけの定義を置かず、例として「モカハラー」(エチオピアのハラー地区)と「モカマタリ」(イエメン)を挙げています。袋で「モカブレンド」と書けるのは、モカを 30% 以上使った物です。どちらの国の豆かは、裏の原材料の欄で確かめます。
この記事は、袋や店で「モカ」の名前を見て、どこの豆なのか、どうして 2 つの国の名前なのかを知りたい人に向けて書きました。書き手は、この記事のためにモカを飲んでいません。名前と産地の話は、日本の業界の規約、博物館と研究機関の資料、日本の統計から引いています。味の説明は、メーカーの言葉だけを紹介します。
ほかの産地との味の比べ方は「コーヒー豆の産地と味の違い」に、ブレンドそのものの意味は「ブレンドとストレートの違い」にあります。
名前はイエメンの港から
「モカ」の由来
UCC のコーヒー用語辞典は、モカを次のように説明しています。
アラビア半島にあった、かつての港”モカ港”から出荷されたことに由来して、エチオピアとイエメンの2国で生産されるコーヒーを「モカ」と呼ぶ。
カタールの国立博物館(カタール博物館)の資料も、「モカ」という言葉はイエメンの港アル・マハ(Al-Makha)から来ている、と書いています。同じ資料によると、流れは次のとおりです。
- 15 世紀、コーヒーはエチオピアからイエメンに伝わった
- 16〜17 世紀、アル・マハはコーヒーの取引の大きな拠点だった
- 17 世紀には、コーヒーの取引の主な港になっていた
研究機関の World Coffee Research(WCR)は、エチオピアを「アラビカ種(Coffea arabica)の生まれた所」としています。アラビカ種については「アラビカ種とロブスタ種の違い」にあります。
港の名前が、そこから出た豆の名前になり、海の向こうのエチオピアの豆にも使われている、という関係です(資料からの編集部のまとめ)。
器具の「モカポット」は豆の名前とは別の話で、淹れ方は「モカポットの淹れ方」にあります。
規約は「モカハラー」「モカマタリ」を挙げる
袋の名前と範囲
日本で売られる袋入りのコーヒー豆と粉には、業界の規約(全日本コーヒー公正取引協議会の公正競争規約)があります。規約の施行規則の別表 2 は、モカの名前を 2 つ挙げています。
モカハラー : エチオピア・ハラー地区にて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。
モカマタリ : イエメンにて生産されたアラビカコーヒー豆をいう。
どちらもアラビカ種で、ロブスタ種(カネフォラ種)は入りません。モカハラーはエチオピアの中の 1 つの地区、モカマタリはイエメンの国全体の豆です。
この別表は「区分及び範囲の例示」という題で、「モカ」だけの項目はありません。一方で、同じ施行規則の別表 3 は、「モカ炭焼ブレンド」を例に、「モカ」を特定の銘柄として扱い、30% 以上使うことを求めています。
| 袋の名前 | 範囲 | 出典 |
|---|---|---|
| モカ | エチオピアとイエメンのコーヒー | UCC(規約に「モカ」だけの項目はない) |
| モカハラー | エチオピアのハラー地区のアラビカ種 | 規約の別表 2 |
| モカマタリ | イエメンのアラビカ種 | 規約の別表 2 |
「モカ」とだけ書いた袋は、名前だけではエチオピアの豆かイエメンの豆か分かりません(規約と UCC の説明からの編集部の読み)。
エチオピアとイエメンの今
エチオピアのコーヒー(WCR)
エチオピアは、輸出の多い生産国
WCR のエチオピアのページには、次のことが書いてあります。
- コーヒーの輸出は世界で 7 番目(国際コーヒー機関の 2022〜2024 年の平均)
- コーヒーは、エチオピアの輸出の収入の 24% を占める
- 作ったコーヒーの半分は、国内で飲まれる
- 小さな農家が作る割合は 86%
世界知的所有権機関(WIPO)の 2007 年の記事によると、エチオピアの知的財産庁は、2005〜2007 年に「Harrar(ハラー)」「Sidamo(シダモ)」「Yirgacheffe(イルガチェフェ)」の名前を 34 か国で商標として出願しました。2007 年の半ばまでに、日本を含む 28 件が登録されています。袋に、モカの代わりにこうした地名が書いてあることもあります。
エチオピアの森で種が集められた品種「ゲイシャ」の話は「ゲイシャとは」にあります。
日本に届く量は、エチオピアのほうがずっと多い
全日本コーヒー協会の統計(財務省の貿易統計から作成)では、2025 年に日本がエチオピアから輸入した生豆は約 1,507 万 kg で、国別で 5 番目でした。
イエメンからは、2024 年に約 19 万 7,000 kg(国別で 23 番目)でした。2025 年は上位 24 か国に入っていません(24 番目の国は約 24 万 kg)。どちらの数字も、その国から来た豆全体です。
味は、メーカーの説明だけ
味の言い方は、メーカーによって少し違います。
- UCC(モカ):フルーツのような酸味と甘み、コクがある
- キーコーヒー(エチオピア・イエメンの非水洗式):フルーティーな甘い香りと、柔らかな酸味とコクが特徴
どちらもメーカーの説明で、書き手が飲んで確かめた感想ではありません。非水洗式などの精製方法は「コーヒー豆の精製方法」にあります。
「モカブレンド」はモカ30%以上
袋の言葉と、分かること
規約の施行規則には、名前について 2 つの決まりがあります。
- 「○○ブレンド」と書けるのは、その豆を 30% 以上使った物だけ
- 特定の産地や銘柄の豆だけを使ったと書くなら、ほかの豆は使えない
| 袋の言葉 | 規約の決まり | 分かること |
|---|---|---|
| 「モカ」「モカマタリ」など | その豆だけと読める書き方なら、ほかの豆は使えない | エチオピアかイエメンのアラビカ種だけ |
| 「モカブレンド」 | モカが 30% 以上 | 残りの最大 70% は別の豆のこともある |
| 割合の数字 | 書かなくてよい | 数字がなければ「30% 以上」までしか分からない |
(「モカ」だけの書き方の読みは、規約からの編集部の読み)
原材料の欄で国を確かめる
袋の裏の一括表示には、原材料名の欄に「生豆生産国名」が書いてあります。モカの豆なら、ここに「エチオピア」か「イエメン」と書いてあるはずです(規約からの編集部の読み)。「モカ」とだけ書いた袋で、どちらの国かを知る手がかりになります。
ブレンドの袋では、国名は原則として重さの多い順に並びます。3 か国以上を使った袋では、重さの多い順に 2 か国以上を書き、残りは「その他」でよい決まりです。「モカブレンド」なのにエチオピアもイエメンも見当たらないときは、「その他」に入っているのかもしれません。一括表示の見方は「コーヒー豆の買い方」にあります。
缶やペットボトルのコーヒー飲料は、別の規約の対象です。この記事の決まりは、袋入りの豆と粉、インスタントコーヒーの話です。
袋を確かめる順番
袋を確かめる順番
- 表の名前を見る。「モカ」「モカマタリ」「モカハラー」ならモカだけ。「モカブレンド」ならモカは一部
- 裏の原材料の欄で、生豆生産国名が「エチオピア」か「イエメン」かを見る
- ブレンドなら、割合の数字が書いてあるかを探す
- 地区の名前(ハラー・シダモ・イルガチェフェなど)が書いてあれば、エチオピアの中のどこの豆かが分かる
- それでも分からないときは、売っている店や作った会社に聞く(編集部の提案)
次にやること
次にやること
「モカ」と書いた袋を手に取ったら、裏の原材料の欄を見て、生豆生産国名が「エチオピア」か「イエメン」かを確かめてください。
次に読む
- ブレンドの表示をもっと知りたい →「ブレンドとストレートの違い」
- エチオピア生まれの品種の話 →「ゲイシャとは」
出典・確認した資料
- UCC上島珈琲「モカとは」(コーヒー用語辞典。モカ港から出荷されたことに由来・エチオピアとイエメンの 2 国のコーヒー)https://www.ucc.co.jp/enjoy/encyclopedia/dictionary/mocha.html (日付の記載なし。2026-11-04 確認)
- Qatar Museums(カタール国立博物館)「Mocha」(展示「Stories of Coffee in Qatar and Indonesia」。言葉の由来はイエメンの港 Al-Makha・15 世紀にエチオピアからイエメンへ・16〜17 世紀の取引の拠点)https://nmoq.org.qa/en/calendar/stories-of-coffee-in-qatar-and-indonesia/mocha/ (日付の記載なし。2026-11-04 確認)
- 全日本コーヒー公正取引協議会「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約・施行規則」(別表 2「モカハラー」「モカマタリ」の定義・別表 3 の「モカ炭焼ブレンド」の例・「○○○ブレンド」は 30% 以上・特定の産地のみの表示・生豆生産国名・コーヒー飲料は別の規約。令和 6 年 10 月 1 日施行の版)https://www.jfftc.org/DATA/Kiyaku_pdf/b05_H_coffee.pdf (2026-11-04 確認)
- World Coffee Research「Ethiopia」(アラビカ種の生まれた所・輸出は世界 7 位・輸出の収入の 24%・半分は国内消費・小さな農家 86%)https://worldcoffeeresearch.org/countries/ethiopia (日付の記載なし。2026-11-04 確認)
- WIPO Magazine「Making the Origin Count: Two Coffees」(エチオピア知的財産庁の Harrar・Sidamo・Yirgacheffe の商標出願。2007-09-24)https://www.wipo.int/web/wipo-magazine/articles/making-the-origin-count-two-coffees-35887 (2026-11-04 確認)
- 全日本コーヒー協会「コーヒー生豆輸入量 上位24ヶ国」(2025 年のエチオピア 15,068,858 kg・5 位、2024 年のイエメン 196,906 kg・23 位、2025 年の 24 位 242,240 kg。資料:財務省「貿易統計」)https://coffee.ajca.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2026/03/data-24-2025-2.pdf (2026-11-04 確認)
- UCC「コーヒー豆の種類一覧」(モカの生産国と味の言い方。2022-08-02 公開・2025-04-02 更新)https://mystyle.ucc.co.jp/magazine/a_2166/ (2026-11-04 確認)
- キーコーヒー「コーヒーの産地による違いはある?エリアごとの特徴をご紹介」(エチオピア・イエメンの非水洗式の味の言い方。2025-12-26 公開)https://www.keycoffee.co.jp/experience/knowledge/detail/coffee-production-area (2026-11-04 確認)
